その4:「"マテ茶"をたずねて三千里と絶望」
月曜日
翌朝、ホステルのみんなとマテ茶を飲みながら朝ごはん。
相変わらず寒かったが、みんなと話しながら食べる朝ごはんは楽しい。
そういえば、マテ茶農家を紹介してくれるというフリオさんからのメールも、私達が直接農家に送ったメールも返ってきていないことが気になっていた。でも昨日は日曜日、きっとお休みだったのだろう。
ホステルでゆっくり朝を過ごし、昼からマテ茶ミュージアムに行ってみることに。
訪れてみると、玄関に12:00-16:00はCLOSE という張り紙。
そうか、シエスタである。
ここ、アルゼンチンはスペインからの移住者が多い。
その文化を受け継いでこの街でもシエスタがあるようだ。
夕方再度訪れてみると今度はちゃんと開いていた。
中に入ってみると…全然マテ茶の内容がない。
唯一ひとつの像がマテ茶を飲んでいるくらいで、主な展示内容はチェ・ゲバラ。
サイトではここにいろんなマテ茶農家の情報があるようなことが書いてあったにも関わらず、そんな情報は見当たらない。
「今日は何も収穫なかったね」
ホステルに帰り、変わらず楽しいホステル仲間と夕食を食べつつも、どこからも返ってこないメールが気になる。
もともと何の音沙汰もないマテ茶農家のメールは別にして、フリオさんはそれまですぐに返信をくれていた。
きっと今日は忙しかったのだろう。
そう信じることにして就寝。
翌日火曜日。
やはり連絡はない。
だんだん焦ってきた。
街に出てマテ茶屋を探す。
やはり何の情報もない。
カフェに入っていろんなマテ茶サイトを見てみる。
…スペイン語がわからない。
そう、そもそもスペイン語ができないのが何よりの痛手。
もしスペイン語ができれば、もっと簡単に情報収集もできただろう。
二日間、何の収穫もないままホステルに帰る。
初日には期待いっぱいで眺めていたポサーダスの夕日が今日は物悲しく感じる。
「マルコも苦労したんやろうなぁ。めっちゃ気持ちわかるわ」ボソッとつぶやく夫。
マルコとは私たちの大好きなアニメ「母をたずねて三千里」の主人公の男の子。
ご存知ない方のために解説すると、
イタリア人の男の子、マルコがアルゼンチンに出稼ぎに出たまま連絡が途絶えてしまった母親の行方を追って海を渡り、アルゼンチンで母親探しの旅をするお話。
「マルコの『お母さん』が俺らの場合『マテ茶』に変わっただけで、会話の内容一緒よな。」
「…。」
「そういや、マルコもお母さんの手がかりなくなった時に『イタリアで大人しく母さんからの手紙を待ってればよかったんだ。待たずにアルゼンチンなんかに来てしまった僕が馬鹿だったんだ!』みたいなこと言ってたよな。ほんまそれ。」
「…。」
二人でため息をつきながら夕暮れの街を歩く。
この日は火曜日。金曜日にはブエノス・アイレスに戻らなければいけない。そして月曜日には帰国の途に行く。
メールは相変わらず帰ってこない。
この調子でマテ茶農家を見つけられる気がしない。
せめて元気を出すため肉でも食べようと、大好きなチョリソーとステーキを買うが気分は重く沈んだまま。
こんな地球の裏側、アルゼンチンのさらに端っこまできて、なんの収穫もなく帰ることになるかもしれないなんて…。
まさかこんな事になるとは思ってもみなかった。
いや、普通であれば予想して、慎重に行動するであろうところを、私たちの考えが楽天的すぎたのだ。
ホステルに着いて明らかに元気のない私たちを心配してまわりの人たちが声をかけてくれる。
「メールは返ってこないし、マテ茶農家に関する手がかりも見つからないの…」
それは大変だ、ということでスマホでマテ茶に関する手がかりを探してくれる。
なんていい人たちなのだ…。
そして一人が「オベラに行くといい!マテ茶農家はオベラに多いんだって!」と調べた情報を教えてくれた。
よくよく聞いてみると、このポサーダスは言ってみれば日本茶で言うところの静岡市のようなもの。
静岡市でお茶畑を見つけるのが難しいように、マテ茶はもっと郊外で作られているらしい!
なんとなんと、どうしてそんな簡単な事に気がつかなかったのか!!
オベラまでバスがあることを調べてくれ、ここから2時間の距離だということが判明した。
フリオさんからの返事もないし、明日そのオベラという場所に言ってみよう。
ただ、この調子でオベラに行ったところでスペイン語もわからないし、見つかる気がしないけどな…なんて考えつつも、みんなにお礼を言って、夫がステーキを焼いてくれている間、ドミトリーの部屋でふて寝することにした。
[マテ茶探しの旅]
記事一覧
その1:「マテ茶との出会い」
その2:「アルゼンチン・ブエノスアイレスへ」
その3:「ポサーダスの夕暮れ」
その4:「"マテ茶"をたずねて三千里と絶望」
その5:「マテ茶の神、降臨」
その6:「オベラで再び途方に暮れる」
その7:「まさかの出会い」
その8:「上手くいくこともあれば、いかないこともある」
その9:「マテ茶のすべてを知る」
その10:「最後に」