インドと中国、二つの大国に囲まれた小さな国、ネパール。
小さな国土のほとんどをヒマラヤ山脈が占める。
隣接する国境のすべてをインドか中国に接していることから、大国の政治に大きく翻弄されることが多い。
男性ですら生きていくのが大変なこの小国で、さらに立場の弱い女性たちが生きていくには困難を極める。
そんな女性たちが集う場所、WOMAN SKILL DEVELOPMENT ORGANIZATION、通称WSDO。
WSDOは1975年に設立された非営利団体。
病気や障害、またはシングルマザーなど、理由あって十分な収入を得ることができないネパールの女性たちに対して、技術を教え、自立を応援する団体である。
ヒマラヤ登山の拠点にもなる麓の街、ポカラにあるWSDOを訪れてみた。
女性達はここで糸を紡ぐところから製品が出来上がるまでの全ての工程を学ぶ。
作業は分業で進められるが、工程を全て学ぶことで、女性達はたとえWSDOを離れたとしても自立することができる。
女性達は土曜日以外の週6日間、1日平均5時間〜6時間働く。またハンディキャップのある人や、家族の世話で家を離れられない女性は家で作業することも可能である。
全工程を学んだ女性は次は新しく入ってきた女性への指導にまわる。
こうして繰り返し学び、伝え、自立していった女性はすでに12000人を超える。
WSDOでは主に自然の原料を使った草木染めと、そしてケミカルな染料を使用した化学染色の2種類を使用している。
ケミカルの場合でもその成分にはこだわっており、例え乳幼児が口にしてしまっても害にはならないような染料のみを使用している。
小さな子供を持つお母さんが集まる団体だからこその配慮が感じられる。
ネパールでは死別、離婚、いかなる理由であれ、夫を亡くしてしまった女性達に社会的な支援など救いの手はないに等しい。
多くの子供を抱えて自殺に追い込まれる女性、安い賃金で働きすぎて病に倒れてしまう女性が後を絶たない。
だからこそ、WSDOのような団体が必要なのだ。
何年も路頭に迷い、ここにたどり着いた女性も少なくはない。
技術を学び、自立をする。
自分の力で生きていく。
そんな目標を胸に、懸命に学ぶ女性達の目は真剣だ。
各製品にはWSDOのタグが縫い込まれる。
障害を持って生まれ、自分を家族の負担だと思っていた人が技術を身につけて自立していく。
過去のような社会から阻害された暮らしに決別し、自分達で製品を生み出していく。
その過程で生き生きとした表情に生まれ変わって行く女性達。
一人で作り上げられるようになったという達成感と自信を身につけた女性達は心の底からの笑顔を見せる。
NEPAL/WSDOと大きく書かれたタグ。
そのタグには製品を作り上げた女性達の屈託ない笑顔と、新しい自分へのプライドが垣間見える気がした。
Photo by Rafal Janicki